志望校選びで念入りに「校長」を見るべき理由

 

子どもの志望校を選ぶ基準は何だろうか?  「公立か私立か」「入試日程は合うか」「通える場所にあるか」。しかし、親、子はもちろん、学校の担任教師、塾の講師が最も気にするものは「偏差値」だ。志望校を「偏差値」だけで決めたという経験がある読者も少なくないだろう。
しかし、「偏差値」だけでは子どもに合った学校を選ぶことができない、と警鐘を鳴らすのが、学校選びを指南するプロの進学コンサルタントで、『志望校は校長で選びなさい。』などを著書に持つ沖山賢吾氏。今選ぼうとしている学校は、中高一貫校であれば、子どもにとって大切な6年間を過ごす場所となる。新学期が始まり、これから本格的に志望校選びをする家庭に向けて、本当に子どもに合う学校選びの基準を解説してもらった。

■志望校の校長先生が、どんな人か知っていますか? 

 その日の保護者説明会、宮澤雅子校長はいつになく緊張していた。

 「学校でのタブレット学習を強化したい。そのため各ご家庭に、個人所有となるタブレットを購入してもらいたい――」

 東京都中野区にある大妻中野中学校・高等学校。この学校では校長主導のもと、新しい学びのための改革が急ピッチで進められている。海外とのオンライン英会話のためのタブレット使用もその1つ。確実に成果を出すため、宮澤校長はタブレットを個人所有にしたいと考えていた。

 当初は中学1年生だけの導入を予定していた宮澤氏。しかし、上の学年の生徒たちの「少し学年が違うだけで私たちは使えないのですね」という声にハッとし、高校1年生にまで範囲を広げることを決心した。

 「根がせっかちですからね。やるなら一斉にやろうと決めたのです」

 しかし、保護者へどう説明するかには相当頭を悩ませた。なにしろ十数万円という大きな金額を、各家庭に負担してもらわなければならないのだ。いくら私立の学校とはいえ高額だ。異論反論も出るだろうと覚悟して臨んだ説明会。しかし、その覚悟は不要だった。反対や苦情は1件もなかったからだ。

 「保護者の方に大きなご負担を強いる提案でしたので、とても心配していたのですが、そんな心配は無用でした。保護者の皆さんが学校を信頼してくれていることを

 

「アジャイル」する校長

 「アジャイル」という言葉がある。ITやクラウドと呼ばれる分野・業界でのキーワードであり、「機動性のある、機敏な」という意味合いから、ビジネスの世界では「すぐに行動し、すぐに軌道修正する」ことを表現する言葉として使われている。動きの遅い学校・教育業界では珍しく、大妻中野は「動いて」「やってみて」「すぐ直す」。それを可能にしているのが、宮澤校長の実行力。一緒に改革を進める諸橋隆男教頭は言う。

 「宮澤校長が学校でいちばん働いているということを皆が知っていますからね。ですから『この校長の言うことなら聞いていこう』という、厚い信頼を土台としたムードが、職員、保護者を含めた学校全体にあるのです」

 宮澤氏率いる学校への信頼、期待。保護者を含めて学校が1つになっているからこそ、大妻中野の改革はスムーズに急ピッチで進んでいる。

 2025年の出生数予測は、約88万人。いわゆる団塊の世代の出生数の約260万人と比べると、およそ3分の1となる。単純に考えれば、今ある幼・小・中・ 高・大学などの「学校」は、かつての3分の1の数で足りるということだ。

 「私立大学の約4割が赤字経営」ともいわれる現在、私立中学校や高校も、従来のやり方で生き残れるとは限らない。実際、それに気づいた学校は、大胆な改革に乗り出している。

■日本の高校に「カナダの高校」を輸入

 東京都杉並区にある文化学園大学杉並中学・高等学校(文杉)。松谷茂校長は、学内にカナダの高校を「輸入」してしまった。

 同校は、国内で唯一、カナダのブリティッシュ・コロンビア州(BC州)の教育を採用した Bunka Suginami Canadian International School(BSCIS)というインターナショナルスクールを併設する女子校だ。この「ダブルディプロマコース」へ進めば、日本の高校卒業と同時に、カナダの高校卒業資格が取得できる。そのため、もし生徒が海外の大学に進学を希望する際には、TOEFLの受験やSATといった、一般の「海外留学準備」などを省くことが可能となっている。

 この学校併設には、いくつものハードルがあった。まず、BC州に、文杉がその教育をするに値すると認められること。実際100校の応募が世界中からあり、認められたのは文杉を含め3校だけだった。日本ではもちろんここだけだ。次に、日本の文部科学省から認可を受けること。日本のお役所が「初」がつくことに慎重なのは、今更言うまでもないだろう。そして、学内での意見の調整も難航した。

 「『日本人はオールイングリッシュの授業についていけないのではないか』というような反対も多かったのです。でも私としては、ちゃんとした英語教育を、今までの教育方法の影響を受けない形でスタートしたかった。ダブルディプロマは、まだ誰も挑戦していなかった。ブルーオーシャンだったのです」

 現在は、中学英語にもオールイングリッシュ授業を導入している。松谷校長の「新しいことにすすんで飛び込んでいく」力が、「日本初のダブルディプロマコース」を成し遂げた原動力となったのだ。

 

 

経営者が変われば、学校が変わる

 学校も企業と同じ。経営者次第で学校が、生徒が大きく変わる。そのことを教えてくれるのが、東京都新宿区にある目白研心中学校・高等学校である。

 同校の校長である松下秀房氏、教頭である長谷良一氏は、学校改革のために2012年に他校から招聘された。それから4年、改革の成果は「生徒の成績」という数字として現れるようになった。より偏差値の高い大学への進学率が目に見えて上がったのだ。

 2人がまず手をつけたのは学校の「文化」。それまでは「英語に力を入れている」といっても、何にどのように力を入れて、どのような結果が出ているのかがわからない状態だった。「よくしたい」という思いだけが、空回りしていたという。

 「仕事をしていくうえでの、当たり前の考え方を導入しました。PDCA(Plan Do Check Act)サイクルを回す、つまり計画し、実行し、反省してフィードバックして次につなげるといったしくみです。何が何パーセントどうなっているのか、と数字で表すこともしていなかったので、まず、計画をつくることから始めました」

 学校にPDCAサイクルを持ち込み、結果を「見える化」していく。それが松下氏が最初に取り組んだことだった。学習支援センター開設、Super English Courseの設立の準備、朝テスト、放課後の講習。取り組んだことは膨大にあった。

 改革の成果は、4年たった今、数字としてはっきり現れてきた。2012年に39人だった「日東駒専、中堅有力私立、GMARCH、早慶上理、国公立」の合格者が、2016年には110人と躍進したからだ。この間、たったの4年。しかし、松下氏は「トップ校の合格者数は、問題ではない」と言う。(日東駒専は日本・東洋・駒澤・専修、中堅有力私立は成蹊・成城・明治学院・獨協・國學院・武蔵、GMARCHは学習院・明治・青山学院・立教・中央・法政、早慶上理は早稲田・慶應義塾・上智・東京理科を指す)

 「私はトップ校に何人入れたのかを、大きく言うつもりはないのです。それはほんの一部であって、その学校の教育力を表しているのはマジョリティがどうかだと思います。今の目白研心にとっては、日東駒専レベル以上に合格する子が増えることが非常に大切。平均的な生徒が、どこへ進学できるかのほうが伝えるべき情報だと考えています」

■行く価値がある学校かどうかは校長でわかる

 私立中高一貫校は、学校長の権限が強い。そのため、校長の決定1つでガラッと学校の雰囲気や方針が変わる。改革をしている学校には、必ずそれを率いるリーダーがいる。

 学校外の一個人が学校改革をつぶさに見極めることは難しいかもしれないが、リーダー1人にしぼって見ることは、さほど難しいことではない。企業の動向を判断するために経営者に注目するように、学校を判断するために、校長に注目する。そうすることで、その学校が時代に取り残されずに生き残っていけるかどうかが、手に取るように見えてくるものだ。

 私立校への進学というのは、進学するために通うであろう塾の費用なども含めると1000万円ほどの大きな「投資」だ。それを偏差値という数字だけを見て決めるのは、あまりにも危険すぎる。その学校を率いるリーダーに注目すれば、その学校がこれからの時代に存続できる学校かどうか、しっかり判断することができるはずだ。

東洋経済

 

 

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