「中学受験で全落ち」した親と子に必要なこと

 

2018.3.7  東洋経済オンライン から転載

 

 

※石田勝紀先生へのご相談はこちらから

この2月に中学受験をした娘がいます。A塾に5年生から入ったのですが、最初のテストで驚くほどひどい点数を取ってきました。「初めてなので、仕方ない、必ず上がります」と先生に言われたものの1年後、まったく変わらず……。兄たちの受験の時は、B塾の先生に「お母さんは絶対に勉強を教えないでください」と言われ、先生を信じてお任せしたおかげで、早慶すべて合格しました。そのような経緯があったので、A塾の先生の言葉を信じ今回もお任せしていました。しかし、相変わらず白紙に近い答案用紙を持って帰ってくるので、これはいけないと勉強法を教えようとしました。

私は大学で数学を専攻、家庭教師もしていましたので、教えられると思っていました。でも反発して、まったく聞きません。足繁く自習室に通い、勉強が楽しいと言い、いつも机に向かっているのですが、偏差値40から上がりません。それなのに、慶応に行くなどと平気で話していました。
いよいよ年末となり、苦手な単元に絞った解き直しなどやり方について話をしましたが、それでも新しい問題に手を出したり、丁寧に赤ペンで解答を書いたり。何度喧嘩になっても最後までその方法を貫き、高倍率の人気校を連日受験、そしてすべて落ちてしまいました。受かったのは、受ければ受かる学校のみ。

偏差値は低くてもとてもいい学校なので、私はホッとしているのですが、娘はバカだと思われてる。恥ずかしい。明日から学校に行けないと言います。一見明るくて普通の女の子ですが、どこかおかしいのでしょうか? 
(仮名:宮崎さん)

 



■「不合格」はつきものだが親はどう対応するべきか

 今年も中学受験の季節が終わりました。第一志望校に合格して進学する子もいれば、そうでない子もいます。すべての受験というものには必ず「不合格」がつきもので、それによって希望する進路を修正せざるを得ないということは少なくありません。

 

 

 合格していれば何も考えずに、諸手を挙げて一緒に喜んでいればいいのですが、不合格となったり、志望度の低い学校に行く羽目になってしまった場合、親としてどのように子どもに対応したらよいか迷います。

 では、宮崎さんのケースについて考えてみましょう。

 「娘はバカだと思われてる。恥ずかしい。明日から学校に行けないと言います」。この部分がご相談の核の部分だと思います。娘さんの思いすべてが表現されているように感じます。

 偏差値が上がらないにもかかわらず、偏差値が高い学校を受験したいと言い、自習室にも足繁く通い、勉強は楽しいと言う。このような受験前の状態は、どう考えても矛盾していますよね。「この子は、自分のことがよくわかっていない“変わった子”なのだろうか」と思われても不思議ではありません。

 



■表面的言動で “凄い自分” を作っていく

 でも、それは変わっているのではなく、「理想的自分に陶酔するタイプ」だというだけです。

 ・自習室に足繁く通う自分って凄い

 ・「勉強が楽しい」と言っている自分って凄い

 ・偏差値の高い学校を受ける自分って凄い

 こうやって凄いと感じる自分を演出していくのです。学力が低いことは自分が一番よく知っているので、それを感じさせないようにするために、表面的言動で “凄い自分” を作っていくのです。兄弟が早慶に行っていることとも無関係ではありません。おそらく家庭内に早慶ムードが形成されており、娘さんも自分もそのゾーンだと思っている可能性があります。

 通常はそれ自体は問題ないどころか、自分もいけるという自己肯定感にプラスに働くことが多いのですが、娘さんのようなパーソナリティの子の場合は、学力が上がらない自分が継続されると、それを覆い隠し外面を取り繕っていきます。そうしたケースを幾度か見てきました。

 ですから、「あれこれ勉強のやり方を指摘される自分は凄くない」と思っているので、親の指摘などを受け入れることは滅多にありません。

 勘違いしてはいけないのは、このようなパーソナリティは悪いというものではないということです。ただそのようなタイプだというだけのことです。タイプがわかれば、そのタイプに合わせたアプローチをしなければなりません。単純に「おかしい子」「変わった子」で片付けてはいけません。タイプの問題なのです。今は、逆行した対応をされているのでアプローチを修正する必要があるでしょう。

 

 

 

ではアプローチについてお話ししましょう。

 子どもが不合格となった場合、大抵の親は、次の2つのいずれかの対応をとります。

【慰め型】
「『住めば都』と言ってね、入ってしまえば、その学校がよくなるもんだよ」
「でも今まで頑張ってきたから、これから明るい未来があるよ」

 


【一緒に落ち込む型】
「ママもね、昔行きたい学校に合格できなくて、一晩中泣いたものよ」
「本当にママもがっかりで、悲しくなってきちゃった」(言葉に出さなくても雰囲気で作る場合もある)

 おそらく宮崎さんもいずれかのアプローチを取られてきたことでしょう。しかし実際は、これらのような語りをしたところで、当の本人には、そんな言葉は耳に入りませんし、心にも響きません。

 「しょうがないよね。力が足りなかったんだから」とか「いけもしないところを受けたいとかいうからそんなことになったのよ!」と現実をそのまま言葉にして語る親もいるでしょう。まさに図星であるだけに、「泣きっ面に蜂」の言葉は子どもの心をずしずしと突き刺していきます。このような言葉によって、発奮してやる気を出す子であれば多少の効果もあるかもしれませんが、そうでない子の場合、マイナスの効果しかない場合もあります(一般に発奮するケースは極めて少ない)。

 ではどうすればいいでしょうか。結論を先に言いましょう。

 「深刻にならずに、普段通りの日常生活をしていく」だけ。

 別の言葉で言えば、「ほっておく」「子どもの様子に過剰に反応しない」とも言えます。

 娘さんは「バカだと思われてる。恥ずかしい。明日から学校に行けない」と言っているようですが、それは、言わせておけばいいのです。もし返答するならば、「あ、そうなの」程度でおしまいで、それ以上の言葉をかけません。それ以上の言葉をかけると事態は複雑化します。本当に行かなくなるときは、言葉に出せないぐらいショックを受けているため言葉に出ることはありませんから心配ないのです。

 

 

なぜこのような対応をするかと言えば、次のような理由があるからです。

 



■子どもには振り返る「自分の時間」が必要だ

 「子どもは自分のことは自分が一番よくわかっているため、あえて親が何か言う必要はない。それよりも、子どもには振り返る『自分の時間』が必要で、その時間こそが最良の教育になっている」

 しかし、実際多くの場合、自分だけで自分を見つめる時間が必要な場面で、“外野”からあれこれいじってしまうことで、最良の教育の時間を失わせてしまうのです。

 親は心配かもしれませんが、心配しても解決しません。もちろん、「心配しないように」と言われても、そんな簡単に素直に心配しないようにするなんてできません。親ですから心配するのが当たり前です。ですが、それをあえて可能な限り表に出さないようにするのです。

 このように私が言える背景には、次のようなことがあるからなのです。

 「どのような学校に行っても、どのような道に進んでも、将来から見ると、それは必ずその人にとって必要なプロセスになっている」

 現時点のみを見ると悲劇かもしれませんが、私からは「必要で大切な経験」に見えます。多くのお子さんを見てきましたので、このような対応について自信を持ってお話しできるのです。

 なお、このようなお話を今、直接子どもにしても通じません。未来から見て現在を考えるのではなく、過去を振り返って、どうすべきであったかを「考える時間」をあげたほうが効果的なのです。

 

 

石田 勝紀 :一般社団法人 教育デザインラボ 代表理事

 

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