共働き家庭の中学受験 妻はダウン、夏の個別指導塾に16万2000円

 

子育て中の多くの親が中学受験を意識するのは、子どもが小学4年生になるタイミング。共働き家庭も、この流れを無視できなくなっている。

 小学生最後の夏が終わった。

 東京の中学受験本番といわれる2月1日まで、

「あと150日です」

 スマホで開いたエクセルの表を見ながら話すのは、金融機関で働く東京都世田谷区の女性(40)だ。息子の受験までに母親である自分がやるべきことのリストは、昼休みに作った。秋からの模試の日程や学校説明会、複数の受験校の願書の締め切り日などがずらりと並ぶ。

 志望校別模試の申し込みの日には、申し込み開始時間の10分前にアラームも設定。本番さながらに志望校の校舎で模試を受けられる権利は、先着順だからだ。

 少し前までは、専業主婦のように付きっきりでサポートする人がいないと中学受験は無理、が共通認識だった。つまり、
「共働き家庭に中学受験は無理」。それが、「共働き家庭でも中学受験」が珍しくなくなったのはいつからだろうか。



●2週間で新聞1週間分

 保活を制し、小1の壁も乗り越えた。次に登る山として中学受験を目指すというよりは、放課後の遊びや学習の質への不安、学童保育に通えなくなる4年生を前にその代替として塾通いを考えることなどが、中学受験を考えるきっかけになっているようだ。

 都内には、文京区や港区など児童の4割前後が中学を受験して地元の公立以外に進学するというエリアもあり、周囲に流されて受験を決める親子も少なくない。

 冒頭の女性もこう話す。

「友だちがみんな受験するから勉強したい、と言い出した息子に、経済的なこと以外でダメだと言う理由もなかった」

 むしろ、経済的にはまかなえてしまうからこそ、子どもがそうしたいと言えば「共働き」を理由にあきらめさせる親は少ないだろう。結果、日々の仕事と塾への送迎、平日の面談や保護者会、志望校の説明会などあまたの行事をこなしつつ、日々の子どもの勉強にも伴走することになる。親のサポートなしに自主的に勉強する小学生は、いないに等しいからだ。

 

冒頭の女性の家庭では、夫はもっぱら、保育園に通う長女の世話を担当。入塾時に講師から「男の子にはプリントの整理は無理。お母さんの役目です」とはっきり言われて以来、受験のサポートは主に、女性が担当している。

 文京区に住む公務員の男性(50)と会社員の妻(48)夫婦の場合、塾のプリント整理は男性の担当。長女(15)が受験したときと同様に、小6の長男の国語と社会は妻が、算数と理科は男性がサポートしている。

 ただ、進学実績にひかれて決めた、長男が通う塾は、長女が通った塾と違って、「働く親にフレンドリー」とは言いがたい。ほぼすべての教材が冊子ではなくプリントで、その量は2週間で新聞1週間分ほど。勉強をサポートする場合、そのすべてを整理するだけではなく、目も通すことになる。もう、居間はファイルだらけだ。

 男性は言う。

「この塾のプリント整理の大変さは有名で、週末ごとにやらないとわけが分からなくなる。宿題も親のフォローが必要で、それも量が多くて終わりません」

●子どもの人生への投資

 妻の職場近くの繁華街にあるその塾には、夫婦のどちらかが迎えに行く。小6になると、授業が終わる夜9時近くまで「残業できてしまう」状況に。

「この春、僕が毎日終電で帰るほど忙しい部署に異動になってからは、同じタイミングで正社員になった妻がギリギリまで働いて、迎えに行っていました」

 妻が過労で体調を崩すのに、そう時間はかからなかった。5月にはダウン。帰宅後に宿題も見ていて、疲れやストレスがたまったのだ。

 やむなく密着サポートを中断すると、成績はみるみる下降。長男は反抗期で勉強には集中しないが、「じゃあ受験はあきらめたら」と諭しても「どうしても受験する」と譲らない。悩んだ末、夏休みは「塾のための塾」に頼ることにした。

 朝はお弁当を持たせて個別指導の「塾のための塾」に送り届け、午後はそこから、通常の塾の夏期講習に転戦する。成績は御三家レベルも狙えるほどにアップしたが、個別指導塾から届いた請求書は、

「16万2千円でした」(男性)

 

 

●大学入試にも役立つ

 子どもには最良の教育環境を与えたい。地元の公立中学に進学して高校受験を目指し内申点を取るほうが、共働き家庭には大変そう。そんな思いが、どんどん財布のひもを緩ませる。

 お金だけではない。親たちを最も悩ませるのは、仕事とのバランスだ。江東区在住でメーカー勤務の女性(45)は、会社からの「管理職になれプレッシャー」に悩む。

 夫は単身赴任中だが、長女(16)に続き、小5の次女も中学受験の準備中だ。

「中学受験に親のエゴがゼロだとは言いませんが、9割は子どもの豊かな人生への投資だと思っています」

 長女とおなじ進学校を狙いつつ「ダンスも続けたい」という次女のために、社会は自宅で女性が教えることにして塾に通う日を減らし、ダンスに通う時間を捻出している。

 女性自身は、これから受験までの1年半は仕事量を抑えたいと考えているが、会社はそれを許してくれない。管理職になるための研修への参加を促されるたび、逃げ回っているという。

「子どもにとって一度きりの中学受験を支えられなかったら、一生後悔すると思う。いまはそう割り切って、受験に向き合いたいのに」

 子どもを支えたいと思いつつ、思う存分、仕事もしたいという葛藤を抱える親も多い。

 千代田区で官僚として働く女性(50)も半年ほど前、小6になる長女の受験を見据えて上司に業務の軽減を相談した。返ってきたのは「つまらない仕事ばかりになることを覚悟して」という言葉。落ち込んだが、なぜか異動先は海外出張もある部署だった。やりがいは申し分ない。でも、受験のフォローは十分にできない。

 それでも受験はさせる、とこの女性。

「娘はしっかり者で、夏休みも一人で頑張れた。それに万一失敗しても、中学受験の勉強は、大学入試などで活用できる内容だと確信しました」

 実際、中学受験はその後の人生にプラスだという経験者の声は少なくない。渋谷区に住む共働きの男性(43)もこう話す。

 

「中学受験で勉強したことが、人生で一番役に立った」

 自分自身も、30年以上前に中学を受験。その後、いわゆる一流大学に進学した。振り返ると、考え抜いて問題を解く能力は、方程式や定理を使えない中学受験の算数などで培われたと感じている。それが、就活にも役立った。子どもたちにも中学受験を経験させたい。現在、長男はトップレベルの中高一貫校に在学中。小6の次男も、御三家を狙って勉強中だ。

 中学受験の「塾ソムリエ」を名乗り、塾に関する著書も多い西村則康さんも、35年以上の受験指導経験からこう話す。
「中学受験のゴールは合格ではありません。“学ぶ姿勢”を身につけることが一番大切です。これが身につけば、将来の大学受験にも役立つのはもちろん、生き抜く力も身につきます」

 とはいえ、多くの子どもは放っておくと勉強しない。仕事と受験サポートに伴う過労とイライラ、「十分にサポートできていない」という罪悪感から、

「これまでの子育ての中で最大の負荷」(会社経営の女性・45)

 という声も上がる。

●長期の予定は挫折する

 やはり、働く親に中学受験のサポートは無理なんでしょうか。 西村さんの答えは、

「長期の学習スケジュールは親子で挫折しがち。まずは1週間ほど、やった勉強を日々書き出して、通常モードで子どもがやれる勉強量の把握を。その後は週単位で作ってもいいですが、出勤前にメモ程度でその日にやることを書かせてチェックするだけでいい」

 ホントですか?

「あとは、親が合格のために自分を犠牲にしていると思わず、楽しく仕事にも取り組めたら、子どもは最終的には大丈夫。素晴らしい学歴の上司が素晴らしいとは限らないでしょう(笑)」

(ライター・三宮千賀子)

※AERA 2017年9月18日号

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