私立大の入試や国公立の前期日程試験がある2月は、受験生の踏ん張り時。家族はそんな受験生にどう接したらいいのだろうか。20年以上受験生をサポートしてきた大手予備校、河合塾福岡校(福岡市中央区)の宮崎敏彦校舎長(44)に聞いた。
「一番大切なのは、力まず自然体でいることです。例えば『点数が伸びる』などと書かれた参考書を、子どものために何冊も買ってきたケースがありました。このように親が力みすぎると『自分は信頼されていない』と受験生は感じます。また、そうした力みは家庭内を緊張させます。受験生は日頃、学校や予備校の受験熱に合わせて疲れているので、家庭は『いつもの自分でいいんだ』とリラックスできる場所にしてあげましょう」
「状況に応じて『頑張れ』と『頑張っているね』を使い分けてください。親は期待からどうしても常に頑張れと言ってしまいますが、頑張っているのに結果が出ないときもあります。声を掛けようとしたときには一呼吸置き、状況に合った言葉かどうか考えてみましょう。また、言葉だけでなく、夜食を差し入れるなど普段の何げない気遣いを、励まされた体験として挙げる受験生も多いです」
「18、19歳の難しいところですが、親が受験に一生懸命になるのを嫌う一方、親の無関心にも敏感で、孤独を感じてしまいます。もちろん陰で見守りながら放任するのと、本当に無関心なのは違います。『父親がセンター試験の日程さえ知らなかった』などが無関心の例。子どもの状況は把握しているけれど、静かに見守り、必要なタイミングで適切な言葉掛けができる-。これが保護者の理想のかたち、お釈迦(しゃか)様型です」
「一番避けたいのは無関心層が陥りがちな、直前狂乱型。受験が近づくにつれ親が慌ててしまい『何だこの成績は』などと口を出すケースです。こうなったら子どもは受験どころではなくなってしまいます」
「豚カツなどの験担ぎメニューは、受験生の精神状態を見極めてから出してほしいです。応援メッセージにもなりますが、不安な中で試験を迎える子にとってはプレッシャーにしかなりません。いつも通り送り出すのが一番です」
「大学受験の場合、高校2年の冬までに、進路や学費のことを家族でしっかり話し合いましょう。受験生は言わないだけで家計のことも気にしています。直前に『私立大は学費が高いからやめて』などと計画を揺るがす例もまれにあり、受験生がパニックに陥ってしまいます。逆に、高校2年までに志望大や学部が定まると、合格率が高くなるといわれています」
「模試にも試験結果についてもいえますが、結果だけでなく頑張った過程を認めてください。子どもたちは受験を通して『報われないこともあるが頑張ることに価値はある』と学びます。それは社会に出ても力になると思います」
=2017/01/31付 西日本新聞朝刊=