不安と焦りが募る入試直前期は、親子ともども気の張った毎日を過ごしています。本番で実力を存分に発揮してもらうためには、どのような心の準備をしておけばいいのでしょうか。『AERA with Kids 冬号』では受験直前の心のケアについて解説しています。
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受験直前の子どもがメンタルのダメージを受ける原因は二つあります。「ひとつは身も心も疲れ切っているケース。もう一つは不安に押しつぶされそうなケース」。そう話すのはアートオブエデュケーションのプロ家庭教師、安浪京子先生です。
「受験期間は1月初旬から2月初旬くらいまでと幅がありますが、だいたい12月~1月を直前期と考えます。子どもにとってこの期間はとても長く、全力で走り続けられる子どもはほとんどいません。調子の波があるのも当然で、メンタル面での要因がからむと、あっという間にミスが増えて点が落ちることもあります」
子どものメンタル面の不調は、どのような状況に現れやすいのでしょうか。
「塾での演習や模試、過去問などを見るとき、正答率の兼ね合いに注意してみてください。これまで落とさなかったようなミスをしていることが増えていたら、集中力が枯渇していることが多い。その時『勉強が足りないのでは』と考えて勉強時間を増やすのは逆効果。むしろ小さなことでいいから気分転換を挟むことを心がけてほしいのです」
気分転換よりも勉強時間を増やした方がいいのでは? と思う親の方が断然多いような気がします。
「例えば、おとなしくてお母さんが立てたスケジュールを淡々とこなしてきた女の子は、秋から勉強に身が入らず、点も下がってしまいました。スケジュールに忠実だった結果、気分転換ができる時間がほとんどなく、身も心も疲れ切ってしまったのです。この女の子の場合、日曜の夕食後に家族でトランプをすることがいい気分転換になり、点も元に戻ることができました」
受験間際だと気分転換によって気持ちが緩んでしまうのでは、と心配になる親も多くいます。上手な気分転換のコツはあるのでしょうか。
「もし気分転換の内容に困ったら『何をしているときが楽しい?』と聞いてみてください。ショッピングやトランプなど、ささいなことでいいのです。何が気分転換になるかは子どもによって全然違います。ある子どもは1月後半に学校を休んで勉強をしたところ、ストレスがたまりすぎてしまった。この子にとって学校で友だちとたわいないおしゃべりをしてケラケラ笑うことが最高の息抜きになっていたのです」
もし不安に押しつぶされそうになったことが原因でメンタル面が不調になっている場合は、どのように接すればよいのでしょうか。
「まずは不安な心の内を引き出してあげてください。よくよく話を聞くと『落ちたら塾の先生に申し訳ない』とか、自分にかかっているお金を案じて心が縮こまっている子もいました。子どもは大人が思いもよらないことで悩んでいるもの。そしてその気持ちは点が上がることでしか回復することはできないのです。過去問題など、時間配分に余裕を持たせて解き直させ、合格点に達していることを確認しましょう」
子どもだけでなく、親も不安で視野が狭くなりがちな直前期。親自身のメンタルはどう整えたらよいのでしょうか。
「『自分が受験生である方がよほどラク』と言うように、受験生のサポートは本当に大変なことです。しかし、子どもからすると煮詰まっている親ほど重いものはありません。『自分はいっぱいいっぱいで何も手につかない』と思うかもしれませんが、あえて自分の時間をつくって少しでもリフレッシュすることが大切です。お料理でも手芸でも軽くスポーツでも何でもいいのです。お母さんの笑顔を見るだけで、子どもはふっと余計な力を抜くことができます。その方が安心して勉強に取り組めるし、受験当日も平常心で臨めると思います」
『AERA with Kids 冬号』ではその他に、「子どもの気持ちを安定させる魔法のテク」や、「受験直前の過去問の解き進め方」など、具体的な学習法を数多く紹介しています。受験直前期、「やるだけやった」と思えるような具体的な学習とメンタルテクニックをぜひ参考にしてみてください。
dot. 12/16(金)