全寮制で“缶詰め”状態 東大受験専門「N塾」の狙いは

 

 

ITmedia ニュース 9月24日(土)7時10分配信

全寮制で“缶詰め”状態 東大受験専門「N塾」の狙いは──カドカワ川上社長に聞く

2015年12月の発表会で握手を交わす川上社長と塾長の坪田信貴さん

 

 

 カドカワの通信制高校「N高等学校」(N高)に通う生徒向けに、今年4月に開かれた個別指導塾「N塾」。「最短1年で東大合格」を掲げ、塾生たちは全寮制の“缶詰め状態”で受験勉強を行う。


 15年12月にN塾の概要が発表されると、ネットでは「缶詰め状態なんて厳しすぎるのでは」「本当に成果が出るのか」などの声も上がっていた。開塾から半年経ち、N塾はどうなっているのか。「いやー……それが、非常に難しくて」――そう話すカドカワの川上量生社長に実態と狙いを聞いた。



●定員30人に対し、入塾は7人 現在は5人だけに

 N高は、今年4月にカドカワが開校した通信制高校。時間や場所を問わずにネットで授業に参加できるのが特徴で、通学に時間がかからない分、通常科目以外の課外授業を取ったり、予備校に通ったりと、それぞれの生徒の進路に沿ったカリキュラムを組めるようになっている。

 プログラミングや文芸小説、アニメ、ゲームなど、さまざまなジャンルの課外授業を用意。その選択肢の1つが、東京大学を志す生徒だけを対象とした「N塾」だ。

 N塾の生徒は名古屋市内の寮に入り、N高の通常授業に加え、東大受験に特化した個別指導を受ける。1日のスケジュールを見ると、ほとんどが勉強か睡眠ばかり。まさに“缶詰め”状態だ。塾長は『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』の著者・坪田信貴さんが担当。坪田さんが運営する「坪田塾」の講師たちがマンツーマンで生徒を指導している。

 外部の高校を中退してN高校に再入学した生徒であれば、高校卒業資格を最短1年で取得できるため、入塾後1年での東大合格も夢ではないという。だがその実態を聞いてみると「いや、全然、生徒が集まらなかった」。川上社長はそう話す。

 「これだけの環境を用意すれば入塾希望者は殺到だと思ったが、初年度の定員30人に対し、実際には50人しか申し込みがなかった。やはり寮に入ってまで勉強するというのは大きな決断が必要だったのでは」(川上社長)。入塾希望者には2月に筆記試験と面接を予定していたが、試験会場に現れたのはさらに減って50人中30人。「正直、東大に受かりそうな人は誰もいなかった」という。

 現れた30人は定員ちょうどだったが、全員を合格させるわけにもいかず、中学校レベルの算数ができるなどの最低条件を満たした上で、坪田さんの面接をパスした13人が合格した。面接では成績ではなく、真剣に受験勉強に打ち込む気力があるかをチェックしたという。「坪田先生は長年、決して優秀ではない子でも成績を伸ばしてきた。そのためには本人のやる気と性格のほうが重要だそうだ」。

 13人の合格者のうち、4月に入塾した生徒は7人。そこから半年で2人が退塾し、9月時点で残っている生徒は5人だけという。「そんなにきついふるい落としをしたつもりはなかったが、少数精鋭になってしまった」(川上社長)。

 



●成績は……

 しかし、生徒の成績は劇的に上がっているという。

 ある生徒(高3)の場合、入塾直後の4月時点でセンター試験の過去問を解かせると、英語が200点中35点、数学1Aが100点中24点と「選択式(四択)の問題なのに、全問をでたらめに回答した場合の平均点よりも得点が低い」という状況だった。だが5月の模試では、英語は141点、数学1Aは77点までアップしたという。

 「東大入試はセンター試験の結果よりも、2次試験の点数を重視するので、その対策をメインに指導している。センター試験の点数を上げるための勉強をさせたわけではなく、基礎からやり直しただけだが、ここまで成績が上がった」(川上社長)

 よほど厳しい指導をしているかと思いきや、「あくまで自由を束縛することはしていない」という。スマートフォンやPC、ゲーム機の持ち込みも禁止していない。

 ただ、スマホなどに熱中しすぎたり、昼夜が逆転したりして、寮の部屋から学習スペースに出て来れず“不登校”になってしまう生徒もいるという。「どの生徒も一発逆転を狙って東大を目指しているが、入塾前からのスマホ依存などのくせが治らず、塾に来られなくなるケースもある。その場合は本人と話し合った上で、スマホやゲーム機を預かっている」。

 「受験勉強の進ちょく管理も大切だが、今の時代にスパルタ的な指導をしても生徒がくじけるだけ。坪田塾のトップレベルの先生たちが張り付いて生徒たちの精神面を支えている」。そのかいあってか、生徒たちも真面目に取り組み、成績が上がることに楽しさを感じたり、5人の中で連帯感が生まれたりしているという。

 入塾希望者は予想以上に少なかったが、成績が上がっていることから「取り組みは間違っていなかった」と川上社長は話す。「東大受験の合格難易度は、(慶応大に合格した)ビリギャルどころではなく、まだ可能性は0%に近い。ただ、ひょっとしたらという手応えがある。成功するかどうかはまだ分からない。ドラマだ」。

 



●「未来のエリートを育てたい」

 充実した設備や講師陣をそろえている一方、N塾の利用費は月6万円(受講費、寮費、食費、光熱費含む)と安価だ。N高自体の学費も、国が負担する「高等学校等就学支援金」の支給を受ければ3年間で29万3912円と、1年平均で10万円を切る(学費シミュレーションより)。ビジネス面では厳しい状況に見えるが、川上会長は、N高やN塾の取り組みに希望を感じているという。

 「ドワンゴはもともと社会に適合できない社員ばかりだった」――カドカワ傘下になったドワンゴの会長でもある川上社長は、N高とN塾のルーツをそう話す。川上社長によれば、ドワンゴでは、エンジニアの才能はあっても会話能力が低い“ダメな人間”も少なくなかったが、彼らが事業を成功させてきたという。

 「同じように、世の中にはいくら能力があっても周囲から“ダメ人間”と思われている子がたくさんいる。そういう子たちに正しい機会を与えたい」。たとえ才能があっても、テストの結果や偏差値から「君にはこの志望校は無理だ」と言われたり、金銭的な事情から塾などに通えなかったりする子どももいる。N高やN塾では、さまざまな課外授業や予備校を通じてチャンスを与え、「未来のエリートを育てたい」という。

 川上社長は「現状の教育は”理想” を生徒に押しつけている」とも指摘する。「『努力次第で無限の可能性がある』と理想を話しても、生徒には届かない。大学受験に成功したり、きちんと就職したりといった“現実”をN高では提供する」。そのために手段を問わず「とりあえずこれだけやれば、少なくともこういう結果になる」と、結果が付いてくる道筋を生徒に示したいという。

 だが、子どもがどんなにN高に通いたいと思っても、実績のない高校への進学を保護者が許すとは限らない。川上社長は「分かりやすい方法のひとつとして東大合格者を出す。それも、東大に行く可能性が低かったであろう子が合格できれば、説得力がある」と意気込む。

 「N高によって救われる子は世の中にたくさんいるはず。ただ、世間の理解が邪魔をすると思うので、納得してもらえる結果を増やしていきたい」(川上社長)

 

 

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