「開成より日比谷!」 都立の名門が東大合格公立校トップに復活できたワケ

 

 

 

 

 日本の政治の中枢、東京・永田町にある都立日比谷高校。かつては毎年、東京大学に200人近い生徒が合格し、「日本一の進学校」と呼ばれたが、1967年の学校群制度の導入を契機に1桁台にまで凋落(ちょうらく)した。しかし、2016年の東大入試では53人と44年ぶりに50人の大台を突破。公立高校で全国トップになり、私立の雄、開成高校を蹴っても日比谷高校に入学する生徒も増えている。日比谷はなぜ復活したのか。


 「開成高校に合格したのに、うちを選んだ生徒ですか。我々の把握している限り、学年あたり15人くらいはいますね」。日比谷高校の武内彰校長(55)はこう話す。同校の1学年の定員枠は320人。その5%が「開成より日比谷」を選択したわけだ。


 開成高校は16年の東大入試でも合格者171人と、35年連続で東大合格者数トップを誇る超名門校だ。基本は中高一貫だが、1学年あたりの生徒定員400人のうち100人は高校入試を経て入学する。中高一貫校は授業の進む速度が速く、高校から入学組は不利になるともいわれる。しかし、「数年前まで開成を蹴って日比谷に行くなんて考えられなかった。この4~5年ぐらいの傾向です」(都内の大手進学塾幹部)という。


 日比谷躍進でリーダーシップを発揮したのが武内校長だ。同校に2012年に着任するや、土日を返上して都内の進学塾を次々回った。講演会を通じて中学3年生の生徒や保護者に日比谷進学を勧めた。訴えたのは「日比谷は勉強だけでなく、部活も行事も全部やりきる。しかも進路実現に向けて最後まであきらめない」という熱いメッセージだった。「わざわざ公立校の校長が塾を回るのは珍しかった。武内先生の情熱に動かされて日比谷を第1志望にした生徒も少なくない」と進学塾関係者は話す。


 次に武内校長はデータを活用した生徒全員の学力向上作戦を展開した。模試などの試験結果をもとに生徒一人一人のデータベースを作成。「当初は成績上位層と下位層が分かれてふたこぶラクダのような分布図だったが、これでは効果的な授業運営が難しい」(武内校長)と分析。教師たちと話し合い、下位層を中上位層に引き上げるため、(1)宿題を常に課す(2)午前7時半ごろからの補習授業を行う(3)教師と生徒との面談を年4回として生徒との対話を強化する――ことを決め、実践した。


 「いくら有能な教師でも一方的な伝達形式の講義はダメ。やりとり重視の対話型として生徒に考えさせる授業を提供しよう」とも教師たちに呼びかけた。日比谷の教師は専任が54人、非常勤を含めると70人以上となる。武内校長は各教師の授業を年2回は見て回り、人事面談は3回実施し、教師と徹底的に対話し、改善のための指導を怠らない。「私の仕事はマネジメントリーダーとして人材を育成すること。企業のリーダーと変わりません」と強調する。


 かつて都立の名門校の校長は定年直前のベテラン校長が大半だった。強力なリーダーシップを発揮することもなく、若手教師の人材育成まで手が回らなかったといわれる。しかし、武内校長は、最年少の39歳で教頭となり、40歳代後半に校長に昇格。都教育委員会が日比谷復活のために送り込んだ教育界のエース的な存在だ。


 そもそも都が都立高校の競争力強化に乗り出したのは01年のことだ。日比谷は「進学指導重点校」に指定された。他校に先駆けて入試時の「自校作成問題」を実施。教員の公募制もスタートした。都の高校教師は1万人近くいるが、進学指導に熱心で能力の高い教師は自ら希望し、日比谷や西など都立高校の重点校に配属された。書類選考、校長らとの面接を経て有能な教師が日比谷に集まった。


 しかも武内校長が率いる日比谷の教師陣は、生徒の面倒見がいい「熱血集団」として知られている。「どの教師も生徒の個別添削指導を徹底的にやっているが、書き込みすぎてけんしょう炎になるような先生もいるほどだ」。午前6時台から出勤し、受験の追い込み時には深夜まで働く教師もいる。「日比谷はしんどい。公務員だからもっと楽な道を選べばいいのに」という教師もいる。しかし、武内校長は「我々ががんばれば、生徒が応えてくれる。やりがいがある」という。


  顧客満足度調査ではないが、生徒による授業評価の調査も実施している。5年ほど前は「授業内容がいい」と回答したのは全校生徒の60%だったが、現在は76%に改善したという。この結果、進学塾に通う生徒の割合は中高一貫校に比べて低い。週3日以上塾に行くのは高校1年生で5%、高2で10%、高3でも30%にとどまる。


 16年の東大合格者ベストテンの進学校はいずれも私立と国立の中高一貫校。6年間のカリキュラムを5年で終え、最後の1年を受験対策に集中できる一貫校は圧倒的に有利だ。そこに挑むのが同年11位に飛躍した日比谷。「中高一貫校以外の高校では実力ナンバーワンだ」と大手予備校や進学塾の指導員は口をそろえる。


 旧制東京府立一中の流れをくむ日比谷高校。卒業生には、トヨタ自動車名誉会長の豊田章一郎氏や新日本製鉄(現在の新日鉄住金)会長だった今井敬氏ら経団連会長経験者も少なくない。ノーベル賞受賞者の利根川進氏など著名人がずらりと並ぶ。「素直でまじめ、やる気のある生徒が増えた」という日比谷。新たなリーダーが次々輩出されそうだ。

 

 

NIKKEI STYLE から転載

 

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