朝日新聞の報道によると、文部科学省が私立小中学校の授業料を補助する方針を固めたそうです。
1人当たり最大年14万円。
ただし、残念ながら所得制限があります。
最大の14万円の補助を受けるのは、世帯年収250万円未満のご家庭。
250万円以上350万円未満のご家庭は12万円。
350万円以上590万円未満のご家庭は10万円。
590万円以上のご家庭には……補助はありません。
えぇっと……、
私立小中学校の学費って、その程度貰ったくらいで賄えるものでした?
(もちろんあればありがたいのでしょうが…。)
文部科学省自身が2015年12月に発表した『平成26年度子供の学習費調査』によれば…
純粋に学校だけにかかる費用である学校教育費は、私立小学校で年平均約89万円、私立中学校で年平均約102万円かかっているとされています。その他塾や習い事等で総額、私立小学校は約154万円、私立中学校は約134万円平均してかかっていると公表しています。
公立の小中学校と比較すると、まるで別世界。
例えば、世帯収入250万円のご家庭が、塾や習い事を一切させずに私立中学校へ通わせたとして、
年収-(学校教育費-補助金)=一家の生活費/年
250万円-(102万円-14万円)=162万円
これ以外に、各種税金等(所得税・住民税・健康保険料・年金保険料)はもちろんかかります。
……これで家賃払って、育ち盛りの子どもの食事を用意して、生活は成り立つのでしょうか?
では、補助金をもらえる上限の世帯収入で。
年収-(学校教育費-補助金)=一家の生活費/年
599万円-(102万円-10万円)=497万円
こちらも各種税金等(所得税・住民税・健康保険料・年金保険料)を支払って…。
……うーん、住んでいる地域によりますが、子どもひとりならなんとか行けるでしょうか?
ただし、塾・お稽古事は一切しないことが前提です。
実際は塾・お稽古事は、私立小学校で平均約60万円、私立中学校で平均約31万円かけられています。
将来子どもを大学まで通わせることを考えれば、今回の私立小中学校の補助金の恩恵を受ける範囲の世帯年収のご家庭が私立の小中学校へ通わせるのは、よほどのご覚悟の上でしょう。
今回このような補助金支給が決まった理由として、
「一定の収入未満の世帯も学費の高い私立校を選択できるように」
「公立の小中学校でいじめを受け私立校を志望する生徒がいること、経済的な理由で中途退学をせざるを得ない生徒がいること、その他様々な様々な理由があり、セーフティーネットとして設ける観点からも」
とのことが文部科学省の見解のようですが…、
それより先にやること、ありやしませんか?
まずは貧困にあえぐ家庭の子どもの給食費を全額補助するとか(一部自治体では実施済み)、
いえいえ、それより育ち盛りの子どもの食欲などバキュームカーのようなもの。
給食費など世帯の年収に拘らず、全額補助でいいのではないでしょうか?
昨今問題視される”給食費未納”に関する事務手数料もバカになりませんよね。
私立小中学校にお子さんを通わせておられたご家庭で、離婚などの理由で急に経済状況が悪化することも考えられますが、やるべきは授業料補助より、離婚後子どもの権利である養育費を相手方に確実に払わすことができる法整備や、シングルマザーに限らず、子育て関連の費用を各家庭に依存しすぎている現状を改善することではありませんか?
あぁ、これもお役人の縦割り行政の弊害でしょうか。
経済的な理由で中途退学を余儀なくされる子どもは可愛そうですが、そもそも親の都合(やむを得ない転勤など)で転校する子なんてゴマンといしますし、公立の小中学校でイジメを受けたから私立に…という前に、役所の権限で詳細な面談のもと特例で別の公立小中学校への越境入学を認める、という手は使えないのでしょうか?
私立至上主義。
教育において国の最高機関である文部科学省がそこまで私立をプッシュしたい背景はやはり、
「子育て費用なんて正直そこまで国が負担できないし、私立に行ってそこそこ自分達で負担してよ。」
てな腹の内の表れでしょうか。
高学歴な役人さんが雁首そろえているはずの文部科学省が考えた今回の案件につけられた予算は、12億8千万円。
優秀な頭脳と貴重な時間を使って固められた方針は、一億層活躍という名の下の「子育て支援してます詐欺」のように感じてしまいます。
他に使い道ありませんでしたか?
こうもピントのずれまくった子育て支援ばかりまかり通る昨今の日本。
選挙で選ばれたはずの国会議員が導くこの世の中は、少子化が加速するばかりです。
お腹痛めまくった子どもたちが、将来幸せになって欲しいだけなんですけどね。
母としては。
皆さん、どうしたら子どもたちが幸せな未来を描けると思いますか?
文・桃山順子
ママスタセレクト 2016年09月06日