小学校の偏差値ランキングから見える 「学区別世帯年収」と住宅人気の関係

 

小学校の「学区別世帯年収」と人気住宅地域との知られざる相関関係

2016.9.1
ダイヤモンド・オンラインから転載

毎年2月1日の登校生徒はクラスで2~3人。これは、ある有名な公立小学6年生のクラスの光景である。2月1日は第一志望の私立中学校の受験日が多い。受験生はこの日、小学校には登校しない。そのため「登校生徒数が少ないことがその小学校の学力レベルを表す」と言われたりする。

 その生徒の学力に最も影響している要因は、親の経済力だったりする。教育にかける資金と時間が、子どもの偏差値を押し上げるからだ。学校のランクと学区別の世帯年収との間には、強い相関関係がある。

 実は、住宅選びの際にもこの「学区年収」は参考になる指標の1つである。今回は、住宅選びの判断材料の1つとして、これまであまり触れられることがなかった学区年収を開示し、その見方を紹介するので、役立ててほしいと思う。

 学区年収という指標を活用することには賛否があるかもしれないが、そもそも住宅選びは多面的な評価をしないと決められないものである。こうしたデータ活用には、「住宅探しに役立てる」という目的以外の意図は介在しないことを、予めお断りしておく。


● 戸建の売れ行きにも影響?  住宅選びは「公立学校選び」である

 20年ほど前のことであるが、筆者は茨城県つくば市に関する調査業務を受けた。それは戸建てニーズが強い場所を特定する目的の調査だった。つくば市は元来一次産業中心のエリアに、学術・研究都市として計画造成された市街地が生まれ、産・学・官の研究者が日本で最も集積しているという背景がある。地元の不動産業者にヒアリングすると、学区によって戸建て住宅の売れ行きは異なるという。

 図書館に行くと、当時は公立学校の平均偏差値が掲載された資料を発見することができた。平均偏差値が60を超える公立学校もあれば、40程度の学校もあった。偏差値60の学校は上位16%に相当し、偏差値40は下位16%に相当するのだから、かなりの差がある。

 隣接する公立校でありながら、生徒全員の平均でこれほどの差が生まれるという光景を、筆者は見たことがなかった。偏差値がここまで違うと、中学以降での進学校の合格者数も大きく違ってくる。進学校に合格するのが当たり前だと思われている小学校では、そもそもの教育環境が他校と異なっている。


そこまでわかれば、次は現地調査だ。学校の通学エリアを調べて地図に落とし込み、現地調査を行うと、偏差値が高い学校が立地するエリアには戸建てが多く、そうではないエリアには空き地が目立って、戸建ては歯抜けのようにしか存在しなかった。これから自宅を購入しようとする人にとって、前者のエリアのニーズのほうが高いことは想像がつく。

 このように、自宅を選ぶ際に公立学校の学区は重要な選定条件の1つとなっている。そのため、不動産のセールストークで偏差値が高い学校の名前を出し、「○○小学校学区域内」と謳うのは実際に効果的なのである。


● 小学校の偏差値ランキングから見える 「学区別世帯年収」と住宅人気の関係

 一方、進学塾には小学校のランク分けデータが存在する。縁あって取得したその資料は、公立小学校のランクが生徒の平均偏差値などから決められていた。そのランクで学区内年収を平均すると、明確な序列が浮き彫りになる。学校のランクと学区年収はきれいに相関するのだ。前述した、親が教育に投じる資金と時間に子どもの学力が比例することの証明でもある。

 最近、学校選択制を採用する自治体が増えたため、公立小学校の学区制度は厳格ではなくなりつつある。とはいえ、公立学校には脈々と引き継がれた伝統があり、教師と親も関与して学区が維持される傾向にある。小学校のランクに相関すると見られる項目は、学校と年収以外にもいくつかあった。

 1つは子どもの親の学歴である。国勢調査の項目には最終学歴がある。大学・大学院卒の割合が高い学区ほど、教育熱心だということだ。若い頃の教育が大人になってからの豊かな生活をもたらすと親世代が強く意識していると思われる。こうした教育意識は、著名な大学が近隣に存在する場所にもその傾向が出やすい。

 都内の本郷・駒場・国立などの学園都市とされる場所は人気住宅地になっており、地域コミュニティが教育環境を支えている。また、医学部の周辺にも同じ傾向があり、三鷹からバスを利用するエリアに立地しているマンション価格が維持されやすいのも、こうした親世代の志向を反映している。


2つ目は、ランクが高い学校の周辺には、不動産の相場が高く業界用語で言う「地ぐらいが高い」場所が多いこと。「自宅価格が年収の何倍」という話はメディアでも取り上げられやすいので、不動産相場と年収は「ニワトリと卵」の問題ではあるが、高級住宅地が高台の上にあることは多い。

 下のグラフを見ても、学区年収と新築マンションの坪単価は相関している。昔は治水事業が未整備で川が氾濫することが多く、自然災害の影響を受けにくい場所は居住地として好まれたことや、庭園を借景にできる立地が「地ぐらい」として不動産価格に反映されて評価されている。都内の代表例として、千代田区立番町小学校、港区立南山小学校(元麻布)、品川区立御殿山小学校、大田区立田園調布小学校が区内1位の年収水準になっている。


● コミュニティの居住者属性が 教育環境も変えて行く

 そして3つ目は、ランクが高い学校の周辺には、高級官僚の官舎や大企業の社宅・寮、分譲マンションが集積しているケースが多いことだ。つくば市はその典型例であるが、東京都江戸川区の清新第一小学校もこれに該当する。

 これと同様の例に再開発エリアがある。再開発は六本木ヒルズのように、一帯を面開発し、街を一変させる。再開発後に転居してくる層の割合が多いがために、平均年収は上がりやすい。同様の理由で、分譲マンションが林立するエリアもそうで、湾岸エリアはこれに該当する。代表例として、中央区立佃島小学校(月島)や江東区立豊洲北小学校がある。

 ここでは、上昇した相場の住居費負担に耐えるだけの財力がある人しか移住することができない。こうして同質な居住者属性がコミュニティの多数を占めると教育環境が変わっていく好例であろう。

 筆者は以前、自社でマンションの評価をしていたとき、調査項目の1つとして、近隣に立地する学校のランクを記述していた。ある物件についてランクがあまり高くない旨の表記をしていたら、近隣の学校の教頭先生から会社に電話があった。クレームのようなものであるが、親からの指摘を受けて学校として対処することになり、教頭がその役割を担った格好となっていた。それ以降、学校のランクを記述するのは、物件のセールスポイントとして評価される場合に限定することとした。


● 情報開示に対する日米の意識差 低い不動産価値を上昇させる効果も

 その一方、米国では物件検索サイト上で、学校のランクが表示されている。周辺住民の年収や不動産価格の履歴なども見ることができる。こうした統計情報が開示される利点は2つある。

 1つは情報が開示されているので、取引が活発になることだ。どんな物件なのか多面的な情報がわからなければ、売買は敬遠されがちになる。そのリスクを取るのは売買する個人だからである。日本では自分が売買した取引価格が公になるのを個人情報のように主張し、嫌がる人がいるが、そもそも米国では所有者は開示されていないので、取引価格は物件に紐づく情報である。開示を望むか、不動産事業者によって情報が操作されることを望むかの二者択一になる。今のところ、日本は後者を望んでいることになる。

 情報開示のメリットのもう1つは、評価が低い場所であっても価値を上げる方向に力が結集される点にある。再開発も、それまでの状況が芳しくないからこそ、上昇余地が大きいと考える向きは多い。米国でも、街を変えていく取り組みが開発事業者だけでなく、地域コミュニティ全体で行われるケースもある。チャイナタウンのような取り組みはこれに相当する。現時点で評価が低いことは、将来も一緒というわけではない。

 筆者は、不動産市場の活性化には情報開示が必要だと思っている。今回、あえて自宅選びのための指標の1つとして「学区年収」を紹介したのも、そうした思いからである。



● ランキングを公開!  東京のトップ小学校はここだ

 ◆学区別年収ランキング「東京23区の小学校区1位」

 最後に、東京23区における小学校のランキングを参考までにお伝えしておこう。東京23区には小学校が800以上あるが、ここでは行政区ごとに学区年収トップの小学校を発表する。本記事でこれまで説明してきた要因が複合されて、これらの順位はつけられている。スタイルアクトが運営する無料会員制サイト「住まいサーフィン」でも、東京都の全学校とまではいかないが、23区については行政区別に上位10校、それ以外の地域については市別に上位5校までを開示することにした。

 ここではおおよそ半数の小学校が対象になるので、ここに掲載されていない学校の現況は、必要があれば別の形で調査しておいた方がいいだろう。自宅探しをしている読者諸氏には、情報を有効に活用いただければ幸いである。

 

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