開成、桜蔭に黄色信号    進学校の偏差値ピラミッドが激変!? 4年後、伸びる有名私立・ダメになる有名私立

 

大学入試で「明治以来」といわれるほど、大規模な改革が行われようとしている。受験業界に激震が走り、御三家を頂点とする進学校の偏差値ピラミッドが崩壊するかもしれない。衝撃の未来予想図。

 

開成、桜蔭に黄色信号

 「'15年1月に順天堂大学医学部の入試で出された問題は、衝撃的でした。

 たった一枚の写真(右)を見せられ、次のような設問がありました。

 『キングス・クロス駅の写真です。あなたの感じるところを800字以内で述べなさい』

 この問題には、旧来型の入試問題とはちがって模範解答がない。しかし、'20年に大学入試改革が行われると、こうした設問が主流になるかもしれません」

 こう語るのは、かえつ有明中・高等学校校長で、『2020年の大学入試問題』(講談社現代新書)を上梓した石川一郎氏。石川氏が例に挙げた問題は、とうてい医学部の試験とは思えないような抽象的なものだ。しかし、このような思考のプロセスやそれを表現する力を問う問題が'20年から大学入試の主流になることをご存知だろうか。

 '14年12月、中央教育審議会が'20年の入試改革に関する答申を出し、学習指導要領も新しくなる。具体的には'19年度にこれまでのセンター試験が廃止され、「高等学校基礎学力テスト(仮称)」と「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」がその代わりになる。

 さらに各大学の入試問題は、知識の量を問うような従来型の入試問題ではなく、冒頭のような模範解答のない論述問題が増える。加えて英語力は英検などの資格で測られるため、受験生は高校のうちに検定を何度も受けることになる。

 対象となるのは現在、中学1年生の生徒からだ。

 首都圏模試センターの教務情報部長・北一成氏が語る。

 「明治以来の大改革だといえます。経済がますますグローバル化していくなか、世界に伍して戦える人材を育てようという国の方針が改革の根本にあります。

 インターネットの普及や人工知能の発展によって、今の子供たちが大人になる頃に求められるスキルや人材は現在のそれと大きく変わっているはずです。従来型の知識詰め込み型教育ではなく、思考力、表現力、主体性、協働性などを育てるのが21世紀型の教育なのです」

 日本の教育改革は遅れており、'15年9月に発表された英国の教育誌による大学ランキングでトップ100に入っているのは、東大と京大のみ。しかも東大が、シンガポール国立大や北京大に抜かれ、アジア・ナンバー1の地位を明け渡した。

 グローバル化に対応しないと優秀な人材が国外へ流出し、日本の経済力自体も弱体化する―そんな不安が改革の背景にあるのだ。

 その目玉となっているのが、大学入試改革だが、これだけ大きな変化があると、もろにその影響を受ける受験生たちは大混乱に陥ることになる。

 「現在、中学2年生の生徒は旧制度で最後の試験を受ける子供たちになる。浪人すると新しい制度の試験を受けなければならないので、できるだけ浪人は避けたい。父兄の中には今から戦々恐々としている人もいる」(大手予備校教師)

 さらに言えば、大学が求める人材も変わってきており、これまで多くの進学者を送り出してきたエリート進学校が今後も受験界で覇権を握り続けられるかどうか、雲行きが怪しくなってきた。

 例えば、旧来の知識偏重型大学入試における「王者」として君臨してきた開成高校。過去30年以上にわたって東大合格者数トップの押しも押されぬ名門校だ。しかし今後、東大を頂点とする偏差値至上主義から抜け出せなければ、時代の変化に対応できない可能性もある。大学受験大手予備校の幹部が語る。

 「開成は東大入試に焦点を絞って、いかに効率よく勉強するかという点に力を入れてきた学校。近年、現役東大合格率で開成をしのぐ勢いの駒場東邦も似たスタイルの教育です。成功体験があるだけに、新しい教育システムへの移行が遅れる可能性もあります。女子高でいうと桜蔭や豊島岡女子学園もこのタイプです」

 

 

「二番手校」が没落する

 開成と並ぶ男子の御三家の一角である麻布と武蔵はどうだろう。

 「麻布は中学校の入試でも『ドラえもんが生物として認められない理由は何か』といった意表をつくような問題が出る学校。思考のプロセスを論述させる力を育てるという意味で、昔から独自の教育を行ってきたと言える。その意味で時代が麻布に追いついたということで、ますます人気が出る可能性が高い。

 武蔵も昔から『生徒の自由な発想、自発的な学習』を重要視してきた。取り立てて『うちは21世紀型教育をしている』と広報をしているわけでもないし、近年東大進学実績が凋落しているため、かつてほどの人気はありませんが、今後その実力が認められて御三家の名にふさわしい名門として復権するでしょう」(教育ジャーナリストの後藤健夫氏)

 関西圏では灘や甲陽学院といったトップ校はもともと放任主義で、知識詰め込み教育を行っていない。だが、あまりに自由すぎるがゆえ、また首都圏のような緊迫感がないため、改革への対応が遅れる懸念がある。

 そして、これから落ち込む恐れが大きいのが、開成をお手本にした進学実績重視の教育から抜け出せない二番手校だ。

 「芝、巣鴨、城北、攻玉社、吉祥女子といった難関大学受験に焦点を当てながらも、御三家のような余裕を持てなかった進学校は、難しい局面に立たされるでしょう。

 これまで知識を詰め込む努力をすることで成績を上げて来たのに、その努力自体を否定されてしまい、新しい試験にどう対応したらいいかわからず真っ青になる生徒もでてくる。新しい大学入試に対応する21世紀型教育に特化した新興校が追い上げてくるなかで、学校と父兄がうまく方針転換できるかがカギになる」(前出の予備校幹部)

 21世紀型教育のキーワードになっているのが、「アクティブ・ラーニング(能動的な学修、以下AL)」という学習法だ。旧来の学習法は教師が講義する内容を聞いて理解し、記憶するという受動的なものだった。

 だが、これからは学びの主体を学生に移し、対話や議論、発表を重視するというのがALの方針である。今後はALをうまく取り入れることのできる学校が躍進する可能性が高い。

 「例えば海城です。この学校は今まで東大合格者数でベスト10に入ることを目標にしてきました。そして実際に成功を収めたにもかかわらず、いち早く知識偏重型教育に見切りをつけ、21世紀型教育に向けて舵を切っています。

 インターナショナル・バカロレアという国際的な大学入試資格が取れる学習システムがあるのですが、そのような新しい分野にも積極的に踏み込もうとしています」(前出の北氏)

 冒頭の石川氏が校長を務める、かえつ有明もALに積極的。今年の中学入試では、「おもてなし」をテーマに受験生たちに議論、発表をさせるという試みも行っている。

 「『私はこう考える。なぜなら……』というロジカルな思考がしっかりできているかどうかが大切。知識をもとに思考、表現する。そして他の生徒との対話によって自分のロジックを進化させる。そのような能力を持つ人材が、これからの世の中で求められています。

 偏差値至上主義にはなじまないが、潜在力があり、自分らしい生き方を求める生徒たちに成長のチャンスを与えるのが私たちの仕事だと思っています」

 他にも聖学院、工学院、立教女学院、関西学院千里国際、立命館宇治といった学校はいち早く21世紀型教育を実践して、志望者数を増やしている。これらの学校は現在のところ、中学入試の偏差値はさして高くない。大学入試改革後の伸びしろが大きい「お買い得」な学校といえるだろう。

 ALとともに重視されるのが、従来の受験英語とは異なる実践的な英語教育だ。とくに積極的に帰国子女を積極的に受け入れている学校は伸びる可能性が高い。

 「進学校にしては珍しい共学でありながら、すでに御三家に並ぶ進学実績を出している渋谷教育学園幕張や同学園渋谷が、典型的な成功例です。優秀な帰国子女を積極的に受け入れて、高度な英語教育を行ってきた。加えて生徒の自主性を重んじる『自調自考』という校是はALの本質とも重なります。この二校はまだ伸びしろがある」(本間教育研究所の本間勇人氏)

 他にはフェリス、東洋英和、頌栄女子学院、洗足学園といったプロテスタント系の女子校はもともと英語教育に熱心なので、全体的に底上げされるだろう。

 

付属校に入れるのがいい?

 もう一つ予想される大きな傾向が、「付属校人気の上昇」だ。大学受験がどうなってしまうかわからないなら、最初から大学入試のない付属校に入れたいと考える親が増えているからだ。

 「慶應付属校のブランド力は元々トップクラスですが、さらに人気が高まっています。他には国がグローバル化を後押しするSGU(スーパーグローバル大学)に指定されている法政の付属校、高校がSGH(スーパーグローバル高校)に指定された青山学院なども志願者を集めている」(本間氏)

 AL、グローバル化に即した英語教育など受験生に求められる学力はますます高まっていく。だが、すべての高校生が教育改革の波について来られるかどうかは極めて不透明だ。前出の予備校幹部が語る。

 「中レベル以下の学校で、基本的な知識が身についていないレベルの生徒相手に『ロジカルに考えろ』、『ディベートしろ』といっても無理な話。ALとは名ばかりで、知識も思考力も身につかない『ゆとり教育』の二の舞になる可能性だってあります。結局、グローバル人材を育てるためのALというかけ声は上位5%くらいのエリートのためのものなんです」

 森上教育研究所の森上展安氏も次のように指摘する。

 「ALはそもそも家庭での予習や復習が前提となっている。それを自分でこなせる生徒と、自習する意志や能力がない生徒との格差がますます広がる可能性が高い。

 これからの塾や予備校はそのような教育格差を埋めるという役割も担うべきでしょう。そのためには、役所が塾をサポートするなど新しい制度が必要になってきます」

 学校で基本的な知識を教えてくれないので、それを補うための塾が乱立する―そんな本末転倒ともいえる状況が生まれるかもしれない。

 改革の結果がどのようなものになるかはまだわからないが、来たるべき変化に備えて教師や生徒たちは動き出している。時代の潮目をしっかりと見据えつつ、学校選びにのぞみたいところだ。

 「週刊現代」2016年3月5日号より

中学受験 偏差値
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