なぜ「開成」「麻布」「武蔵」から一流が育つのか

 

 

男子御三家で鍛えられる21世紀型能力

 

今年も中学受験シーズンが終わった。最高の合格を手にした人、ちょっと悔しい思いをした人。それぞれだっただろう。首都圏の中学受験において、別格の存在感を放つのがいわゆる「御三家」と呼ばれる3つの男子校だ。

いつからか、東大に多くの合格者を出す東京の私学トップ3を世間では「御三家」と呼ぶようになった。手元の資料によれば、1960年代にはすでに麻布、開成、武蔵の順でトップ3が形成されており、1970年代以降は開成、麻布、武蔵の順になった。

3校が自ら「御三家」を標榜することはないし、現在必ずしもこの3校がトップ3というわけではないが、それでもやはり「御三家」の響きは、この3校によく似合う。元来は単なるトップ3という程度の意味しかなかった「御三家」という呼び名が、まるで「横綱」のような意味合いを帯び、東大合格者数とは関係なく、この3校の風格を表す固有名詞となっている。

 

 

キーワードは「運動会」「革命」「散歩」

 

学校ができた順で並べれば、開成1871年、麻布1895年、武蔵1922年。拙著『男子御三家 なぜ一流が育つのか』(中央公論新社)でも論考しているが、開成は責任感の強い長男、要領の良い次男が麻布、年が離れて生まれたマイペースなこだわり屋の三男が武蔵。個性は違うがどことなく似ている3兄弟。ちょうどそんなふうに、私には見える。

 

「3校の違いを一言で言うとどうなるか?」という意地悪な質問を受けた場合には、私は「開成では毎日が運動会。麻布では毎日が革命。武蔵では毎日が散歩」と言うことにしている。もちろん相手はぽかんとする。そこで私は、「運動会」「革命」「散歩」という3つのキーワードからそれぞれの学校の教育を説明し始める。

 

 

時代は変わっても人間の本質は変わらない

 

男子御三家に共通するのは、人の生き方の本質を突いた建学の精神があり、時代の荒波にもまれても、逆風が吹いても、かたくなにそれを貫き通してきたことだ。やれグローバルだ、ICTだ、アクティブ・ラーニングだと流行に振り回されるような学校は、時代の荒波を生き残れない。

名門校と呼ばれるような学校あるいはそうなるポテンシャルのある学校は、経済誌に躍るような派手な流行語をそのままパンフレットに引用するようなことはしない。必ず自分たちの建学の精神や教育理念に照らし合わせ、自分たちらしく意味づけし、自分たちなりの言葉に翻訳してから使用する。

開成の柳沢幸雄校長は、「開成という学校が創立以来目指している頂は変わりません。進取の気性があって、自由であって、質実剛健である若者を育てることです。しかし、時代によって頂に至るルートは変えなければならないでしょう」と言う。

 

麻布の平秀明校長は「アクティブ・ラーニング? 麻布の教室では授業中に立ち歩く生徒がたくさんいて、昔からアクティブですけど」とうそぶく。

 

武蔵の梶取弘昌校長は、「教育としての動的平衡を目指す」と表現する。「動的平衡」は、生物学者・福岡伸一氏の「生命とは動的平衡にある流れである」という言葉からの引用だ。細胞がすべて入れ替わっても生命体そのものは変わらないという意味である。

 

同じようなことを言う3校長のこの表現の違いが、くしくも3校のハビトゥス(特定の集団に特有の行動・知覚・判断の様式を生み出す諸要因の集合)の違いを見事に表しているように私には感じられる。

 

 

「時代が変わったのだから、教育も変わらなければいけない」は一見正論だが、取り扱いに注意が必要だ。確かに時代は変わっているのだが、人間の本質はそれほどに変わらない。人間の本質が変わらない限り、教育の本質も変えてはいけない。

男子御三家の教育は、そのことを私たちに教えてくれているのではないだろうか。

 

 

男子御三家のリベラル・アーツ教育

 

昨今、「教科の枠にとらわれるのは古い教育で、これからは教科の枠を超えた21世紀型コンピテンシー(能力)ベースの教育が大事だ」という論調が優勢になっている。教科を教えるのではなく、思考力や創造力、分析力、判断力、表現力、コミュニケーション力などの「能力」を鍛える教育を行うほうが実践的だというのである。

 

しかしいわゆる男子御三家をはじめとする名門校ほど、教科を基本としながら縦横無尽に教科の枠を超え、その中で生徒たちが自らコンピテンシーを涵養できるようにする方法を何十年も前から実践している。生徒たちが能動的に学ぶ、「アクティブ・ラーニング」についても同様だ。

 

特別にパッケージ化されたキャリア教育や人格教育がなくても、いや、あえてそういうものはもうけずに、どこの学校でも同じように教えている9教科の中に、それらの要素を自然に取り込んでいる。9教科をまさに「リベラル・アーツ(古代から西洋に伝わる自由七科)」の延長として教えている。

 

これこそ最高のキャリア教育であり、全人教育であり、「生きる力」を育む教育であると私は思う。昨今の教育議論は大風呂敷が広がっていくばかりで収拾の目処が立たない。枝葉の議論に振り回されず、今一度教育の原点に立ち戻ることも大切ではないだろうか。そのヒントが、男子御三家の教育にはある。

 

 

2016.2.10   東洋経済オンラインから引用

 

 

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