2015.11.18
リセマムから引用
2016年から入試制度が大きく変わる大阪府立高校・大阪市立高校。大阪公立高校入試の特徴であった前期日程・後期日程の選抜から「一般選抜」へ原則一本化される。これにより、以前は可能であった前後期で同じ高校を2回受験するということができなくなるなど、中学生の志望校選択にも影響がでそうだ。
大阪府の高校入試に詳しい第一ゼミナールを運営するウィザス 情報企画室 室長の高澤隆一氏に、2016年の高校入試の変更点や動向、受験生へのアドバイスを聞いた。
◆大きく変わる大阪公立高校の入試制度
--大阪公立高校の入試はどのように変わりますか。
ひとつは、従来の前後期選抜から「一般選抜」へ原則一本化されます。一部、「特別選抜」と称する早期選抜制度が残りますが、それは工業に関する学科や体育に関する学科など、18校のみに絞られます。
以前の前後期選抜では、たとえば人気の高い天王寺高校の文理学科を前期選抜で受験し、不合格となった場合、後期選抜で同じ高校の普通科を受験するということができました。文理学科と普通科とで難度の差はありますが、天王寺高校を受験するチャンスは2回あったわけです。しかしながら、次年度よりチャンスは一般選抜の1回しかありません。受験生にとっては、慎重な受験校選択を迫られることでしょう。
また、複数学科を有している高校の場合、第2志望を願書に記入することができるのも、重要な変更点のひとつです。たとえば、豊中高校では文理学科と普通科の2学科を有していますので、第1志望を文理学科、第2志望を普通科という出願ができるのです。
英語科と理数科、普通科と3学科を有す大阪市立高校では、英語科を第1志望とし、理数科を第2志望とした場合、文系に行きたい生徒が理系に行く可能性が出てきます。このようなミスマッチが起きないよう、進路指導には細心の注意が必要です。
◆入試科目が5科目に統一
2つめとしては、学力検査科目(入試科目)が5科目に統一されるということです。これまでの前期選抜では英数国3教科入試が一般的でした。天王寺高校の文理学科前期選抜では、2月に入試が実施され、しかも3科目で受験できるということで、かなりの人気がありました。しかし次年度は一般選抜1本で、なおかつ5科目入試です。理社が苦手な生徒にとっては、厳しい入試となるでしょう。
3つめは、自己申告書の提出が義務化されることです。今年から、各高校よりアドミッションポリシーが策定されました。それに沿って、自己申告書を記入し提出しなくてはなりません。次年度のテーマは「あなたは、中学校等の生活(あるいはこれまでの人生)でどんな経験をし、何を学びましたか。また、それを高等学校でどのように生かしたいと思いますか。」という内容です。
一般選抜を例にとりますと、ボーダーゾーン内(入試得点順位で、定員の90%から110%までの層)の生徒で、自己申告書が高校のアドミッションポリシーに合致している場合、高校の校長は、該当生徒を優先的に入学させることができます。つまり、定員100名の高校で110番の生徒の自己申告書の内容がよければ、91番の生徒を不合格にして、110番を合格させることができるということです。しかし、この制度の運用は極めて難しいのではないかと言われています。
自己申告書は事前提出ですので、学校や塾の先生が指導することになるでしょう。そうすると、似通った自己申告書が多くなり、入試選抜に十分に活用できるのかが難しいところです。結局は、従来どおり学力検査において、できる限り高得点を獲得することが重要となるでしょう。
◆相対評価から絶対評価へ
最後に、内申(評定)が相対評価から絶対評価に変更されます。現中3については、中3時の内申のみが必要ですが、現中2は中2と中3、現中1は3年分の内申が必要となります。その内申と学力検査の比率も、高校によってタイプIからVまで5段階にわかれております。難度の高い高校では、学力検査と内申の比率はタイプIの7:3となり、入試当日の得点が重要になっています。各高校において、どの比率を採用しているかしっかりと調査して、もっとも効果的な受験勉強をしなくてはなりません。
◆人気の文理学科の倍率に変化はないか
--2016年度はどのような入試になるでしょうか。
文理学科については、人気が確立されており、入試制度の変更があっても倍率はさほど変わらないのではないかと考えています。しかし、北野高校と天王寺高校は文理学科のみの募集となりますので、これまでギリギリですべりこんでいた受験層が、安全志向で1ランク下げて受験することが考えられます。天王寺高校を考えていた受験層が、三国丘高校の普通科に流れてくることがあるかどうか、中学校で実施される「進路希望調査」も考慮しながら動向をチェックする必要があります。
◆絶対評価の影響で、2番手校に強気出願も
また、絶対評価に変わり、全体的に通知表が高く出る傾向があるため、偏差値55~60あたりの受験層は強気出願を考えるかもしれません。そうなりますと、いわゆる2番手校の倍率が上がることになり、寝屋川高校や泉陽高校などは、難度が上昇する可能性があります。
また、大阪の公立高校では、英数国の学力検査において、検査難易度をA~Cの3段階(Cがもっとも難度が高い)から高校が選択できることになっています。難関校ではC問題を採択することが多いですが、いわゆる中堅校でありながら、タイプCを選択している高校もあります。具体的には今宮高校などがあげられますが、受験生から敬遠される可能性も否定できません。そうすると、近隣の同程度の高校の倍率が上がる可能性もあります。逆に、上位高校のひとつである大阪市立高校の理数科など、タイプBを選択している高校もあります。その場合、高得点が続出する可能性があります。すべては、ふたを開けてみないとわかりませんが、学校や塾の先生など専門家のアドバイスをよく聞いて最適な受験校を選ぶ必要があるでしょう。
◆ケアレスミスをなくすことが合格の秘訣
--入試当日のアドバイスをお願いします。
解けない問題は必ずあります。今までできなかった問題を入試当日に解くのはなかなか難しいものです。大切なのは、解ける問題を必ず正解すること。見直しは、簡単な問題を中心に行ってください。不合格になるのは、みんなができた問題を、自分だけ間違うことですので、いわゆるケアレスミスをなくすことが合格する秘訣です。計算ミスや、スペルミス、そして解答欄がずれていないかどうか、当たり前のことが本当にできているか、しっかり見直しましょう。そうすれば、必ず合格できます。
◆子どもたちの頑張りを見つけてほしい
--入試直前の今、保護者がやるべきこと、できることはありますか。
まずは体調管理です。中3で体調管理までできる生徒はなかなかいません。入試直前期に風邪をひいたり、インフルエンザにかかったりした場合、勉強時間数が激減します。ちょっとした体調の変化が、成績向上に大きく影響してしまいます。
また、まじめな生徒ほどストレスをかかえます。直前期は受験生みんなが勉強していますので、なかなか成績が上がらないものです。大切なのは「子どもなりに頑張っている」という視点で接してあげることです。その頑張りは、大人からすると満足いかないものかもしれません。でも、子どもの小さな頑張りをしっかり見つけてあげて、次の大きな一歩を踏み出させてあげてほしいと思います。
◆難問を解く楽しみを知り、偏差値15アップ
--これまで指導されてきて、印象に残った生徒さんはいますか。
ある公立トップ高校に合格した生徒が中2のときの話です。当時は、自分がトップ高校を受験するとは微塵も考えておらず、なんとなく地元の公立高校に通うと思っていたそうです。私は理数を指導しておりましたが、なかなか要領のいい生徒でしたので、中3の5月頃「いっしょに数学を楽しまないか」と声をかけ、「趣味の時間」と題して、難関高校の数学の過去問を、毎週日曜日に一緒に解いていきました。もちろん、最初は解くことができなかったのですが、基本的な知識を紡ぐことによって解けることがわかり、非常に楽しく感じたようです。その結果、数学の偏差値を56から71まで上げることができました。合格後、「趣味の時間が終わってしまうのか…」とぼそっと漏らしたのが印象的でした。
受験勉強というのは、子どもが大人になる大きなチャンスです。私はその生徒を見て「大人になるということは、苦しいことを楽しめるようになることかもしれない」と教わりました。
--ありがとうございました。
第一ゼミナールは、全国約150拠点で塾を展開し中学受験から大学受験までを指導。大阪公立高校最難関の文理学科に209名合格。旧3学区トップの天王寺高校文理学科へは塾別でもっとも多い46名の合格者を輩出している。独自の意欲喚起指導を推進し、従来の指導法に脳科学の研究成果を活かしている。
◆2016年大阪府公立高校入試スケジュール
願書受付:2016年3月3日~7日
学力検査:2016年3月10日
合格発表:2016年3月18日