<国立大学>33校で文系見直し 9大学で教員養成廃止
◇16年度以降6年間の中期計画
国立大学で2016年度以降、人文社会科学系の学部・大学院の組織見直しを計画しているのは33大学で、人文社会科学系がある60大学の半数超に上ることが20日分かった。各大学の16年度以降の6年間の中期目標・計画の素案が同日開かれた文部科学省の専門分科会で示された。一方、組織の廃止を予定しているのは横浜国立大など9大学で、いずれも対象は教員養成系学部だった。文科省が6月の通知で求めていた国立大の文系学部の組織改編が一気に進むことになる。年度内に文科相が各目標を決定し、計画を認可する。
中期目標・計画は86の各国立大が6年間で達成を目指す事項を盛り込んだもので、国立大学法人評価委員会が達成度を評価し、各大学の運営費交付金の額に反映される。04年度の国立大学法人化で義務づけられ、今回は3期目になる。
人文社会科学系の組織見直しを計画している33大学のうち、宇都宮大は国際学部、工学部などを改組して16年度に「地域デザイン科学部」を新設する。愛媛大は同年度に法文学部の改組と「社会共創学部」の設置を盛り込んだ。
組織の廃止や募集停止を打ち出した9大学は、対象がいずれも教員免許の取得を卒業条件にしない「新課程」(ゼロ免課程)。横浜国立大は17年度に新課程の「教育人間科学部人間文化課程」を廃止し、学校教育課程のみの教育学部(仮称)に組織改編する。
中期目標・計画素案で示された数値目標は全大学で計約1400件に上り、第2期(10年度からの6年間)の8倍。内容は、外国人留学生の受け入れ数・比率▽女性教員数・比率▽外部資金獲得額・採択数--など。
中期目標・計画を巡っては、文科省が6月にその作成の基になる通知を出した。各大学・学部の強みや役割を整理するため、専門分野が細分化している人文社会科学系の改組や教員養成系の新課程の廃止を求める意図だったが、人文社会科学系にも廃止を求めるように読める文面だったことから、学術界などから「文系軽視だ」と反発が起き、文科省は「文書ミスだった」と認めている。【三木陽介】
◇国立大の中期目標・計画素案に盛り込まれた人文社会科学系の組織見直し例◇
大学 中期計画の内容
宇都宮大 国際学部の改組
横浜国立大 経済学部2学科体制、経営学部4学科体制をそれぞれ1学科体制にする
滋賀大 新たにデータサイエンス学部・研究科(仮称)を設置
愛媛大 16年度に法文学部の改組および社会共創学部を設置
熊本大 17年度までに人文社会科学系および自然科学系学部の学部定員を見直し再編統合する